日本に酒蔵数あれど、「奈良流は酒造り諸流の根源なり」。全国的には新潟や兵庫が酒どころとして有名ですが、奈良も古来より酒造りが盛んにおこなわれてきた土地なのです。
「奈良に美味いものなし」と思い込んでいる方に、奈良にも美味い酒とメシがあることを知ってほしい!その道のプロなら名店を知っているに違いない!そこで、日本酒のプロ・杜氏が自ら通う、奈良県内のイチオシ飲食店を教えていただきました!
今回お店をご紹介頂いたのは、代表銘柄「花巴」で知られる美吉野醸造株式会社・専務取締役の橋本晃明さん。まずは、酒造りへの思いや商品特長について伺いました。
「美吉野醸造では、地域の生産農家さん達が育てた酒米と蔵に昔から住む蔵つき酵母を使って、吉野の風土に寄り添う酒造りをしています。山林地帯で高温多湿な吉野だから、そういった環境を好む蔵つき酵母菌は力強く活動して酸を生む。
『酸がある=すっぱい酒』と思うかもしれませんが、そうじゃないんです。当蔵では3種類の酒母(酒のもと)を使い分けたり、米が持つ旨味を引き出して合わせたりすることで酸を活かし、酸味と旨味のバランスが絶妙にとれた商品を作っています」と橋本さんは語ります。
今回お店をご紹介頂いたのは、代表銘柄「花巴」で知られる美吉野醸造株式会社・専務取締役の橋本晃明さん。まずは、酒造りへの思いや商品特長について伺いました。
一軒目「旬菜・中華バル ミツカン」
まずお邪魔したのは、橿原市にある「旬菜・中華バル ミツカン」さん。麻婆豆腐や油淋鶏(ユーリンチー)をはじめとする定番中華メニューが並ぶ中、「中華風アヒージョ」などのオシャレメニューも!ドリンクメニューもワインやオリジナルサングリアなど豊富に揃っています。日本酒は奈良の地酒を中心に充実のラインナップ。
花巴の酸味は、同じく酸味のある料理や油を使ったこってり系料理との相性がいいとのことで、それぞれのお酒に合うお料理を奥様に選んでいただきました。(今回は特別に、ハーフサイズ・食べ比べサイズでご提供いただきました。)
純米速醸うすにごり2019×海老のマヨネーズ和え
最初にいただいたのは、春を感じさせる爽やかな香りの新酒。ほんのりした甘さが酸味によって引き締まり、味わいもとっても爽やか。辛口白ワインのような雰囲気で、日本酒初心者でも抵抗なく飲めそうです。
クリーミーで少し酸味のあるソースで和えられた海老マヨは、海老のプリプリ感やサクッとした衣、トッピングのナッツ…と食感も楽しい1品でした。
水酛純米桶仕込み29BY×五條市産ばあく豚の手作り肉焼売
続いては、吉野杉の木樽で仕込んだ水酛純米(平成29年醸造年)。
飲んだ瞬間に旨味と杉の香りを感じ、焼売の脂のジューシーさにも負けない主張をしてきます。
お酒の旨味と肉の旨味が合わさると口の中が重くなりそうですが、後味に感じる花巴ならではの酸が引き締めてくれるので、どんどん箸が進みます。
山廃本醸造×ヤマトポークと彩り野菜の黒酢酢豚
最後は「燗もおすすめ」と紹介されていた山廃本醸造を冷でいただきました。
他の2種類とは違い、醸造アルコールを添加した本醸造酒です。
コクがあり度数も高いので飲みごたえがあり、甘酸っぱくてコックリした黒酢酢豚との相性抜群!
揚げたポークと黒酢の濃厚さをさっぱりさせてくれます。彩り鮮やかな野菜は、パリッと新鮮!ちなみに、お店で使う野菜はできる限り奈良県産にこだわっているそうです。
紹興酒が飲めない私は今まで「中華にはビール!」と思い込んでいましたが、中華と花巴、アリです!
ただし、麻婆豆腐のような辛い料理との相性は△なのだそう。麻婆豆腐はミツカンさんの看板メニューなので、次はビールと一緒に楽しみたいと思います。
【旬菜・中華バル ミツカン】
住所:奈良県橿原市内膳町4-4-5
TEL:0744-25-7288
営業時間:17:00~24:00
定休日:日曜
ワンポイント:小ぢんまりした人気店なので、平日でも予約がベター!
二軒目「奈良の酒蔵全部呑み うまっしゅ」
2軒目にご紹介いただいたのは、近鉄奈良駅(奈良市)より徒歩約1分のところにある「奈良の酒蔵全部呑み うまっしゅ」さん。
なんと、奈良にある全29酒蔵の酒が楽しめるお店です!料理にもこだわっており、酒好きがぐっとくる和洋中様々なメニューが揃っています。こちらでも、取り扱う花巴2種類に合うお料理を店長さんに選んでいただきました。
山廃純米無濾過生原酒29BY×豚の柚子胡椒焼き
すべてのお酒は、小(50ml)、中(100ml)、大(130ml)のサイズから選べるのですが、じっくり味わうため大サイズでオーダー。
火入れをしていない生原酒なので、フレッシュな味わいです。しっかりした酸味があるので、甘い豚の脂がスッキリして、しつこさを感じることなく食べ進められます。
ピリ辛柚子胡椒の爽やかさとも好相性!名水百選にも選ばれている奈良県天川村の「ごろごろ水」を使用した和らぎ水(チェイサー)でリフレッシュし、2杯目へ!
はなともえ弓弦葉純米吟醸×真鯛のアラ煮付け
続いては、花巴の入門酒ともいえる「弓弦葉」シリーズの純米吟醸酒。
これまで飲んできた花巴と比べると、飲んだ瞬間のインパクトは控えめで飲みやすい印象で、淡泊ながら旨味の詰まった鯛の味を邪魔しません。少し甘めでコックリした味の煮付けと交互に味わっていると…なんだか、米と一緒に煮付けを食べている気分になります!
「うまっしゅ」さんは料理も本格的なので、日本酒好きはもちろん、あまりお酒が強くない方も食事を楽しめるお店だと思います。
個人的には、カウンター席から職人の美しい包丁さばきなどの仕事風景を眺められる点が高評価!お酒を飲みつつ、ワクワクしながら料理を待つのも楽しい時間でした。
奈良の酒蔵全部呑み うまっしゅ
住所:奈良県奈良市東向中町11 八宝マルハチビル1階
TEL:0742-94-3735
営業時間:
月曜~木曜日:15:00~22:30(L.O.22:00)
金曜・土曜日:15:00~23:00(L.O.22:30)
日曜日・祝日:15:00~22:00(L.O.21:30)
定休日:無休
ワンポイント:満席になることも多いので、ピークタイムを外して来店するとゆっくりできます。
三軒目「折衷旬彩 香月」
3軒目にご紹介いただいたのは、ならまち(奈良市)にある「折衷旬彩 香月」さん。
フランス料理の経験もある店主が作る和洋折衷料理が楽しめるお店です。店の造りは純和風なのに、並ぶメニューは洋風のものがたくさんというギャップがとても新鮮!
ドリンクメニューはビールやワインなど豊富に揃っており、中でも日本酒は奈良県の銘柄を常時50~60種類置いているとのこと。なんと、お伺いした際は美吉野醸造のお酒だけで11種類もありました!
これだけあると悩んでしまいますが、店の営業が落ち着いている時であれば、店主さんが好みや食べたい料理に合わせたお酒を提案してくれます。
今回は、ジャンルの異なる3種類のお酒とフェア実施中だったジビエメニューを合わせてご提供いただきました。(お料理は取材用サイズに調整していただきました。)
山廃純米無濾過生原酒29BY×若猪と鹿挽肉のパテ
こちらは2軒目「うまっしゅ」さんでも頂いた山廃純米。醸造年は一緒ですが、こちらの方がより香りに酸を感じました。
底に香りが溜まり、香りを感じやすいチューリップ型グラスで頂いたからでしょうか。噛みしめるとワイルドな旨味が溢れ、スパイスも感じるパテと合わせると、まるで白ワインを飲んでいるようです。
水酛純米2019直汲みにごり×鹿肉のリエット
2杯目に頂いたのは、2019年度醸造の水酛純米。この「直汲みにごり」は、新酒搾り立ての時期にしか味わえない味だそうです。
銘柄としては「ミツカン」さんで頂いたものと同じなのですが、見た目も味わいも全然違う!ほんのり甘くて、酸味としゅわっとした微発泡感があります。バケットにたっぷり塗られたリエットの、口の中で溶けて広がる脂の甘みとの相性もGOOD!
山廃純米「南遷」×日向夏フィナンシェ&ガトーショコラ
合鴨農法で育てたオーガニック米100%で使って造る「南遷」は、まるでデザートワインのような甘口酒!かなり甘いものの、「日本酒感」もきちんとして後口はさっぱり。
「おすすめの組み合わせ」としてスイーツが出てきた瞬間は疑ってしまいましたが、フィナンシェには苦みと酸味がある日向夏を使っており、ガトーショコラもほろ苦い味わいなので重くならずに食べ進められます!
「香月」さんは、外観とメニューのギャップ、お酒と料理の意外な組み合わせ、店主さんのお酒・食材に関するこだわりと知識量…と良い驚きがたくさん詰まったお店でした。
ちなみに、ミシュランガイド2017年版でビブグルマンに選ばれているそうです。
たしかに、お酒3杯と取材用サイズの料理3品をいただいても2,500円という高コスパ。取材ではなくても何度も訪れたくなるお店でした。
【折衷旬彩 香月】
住所:奈良県奈良市下御門町28-1
TEL:0742-22-1018
営業時間:
平日:11:30~15:00(L.O.14:00)、17:30~24:00(L.O. 23:00)
土・日・祝:11:30~16:00(L.O. 15:00) 、17:30~24:00(L.O. 23:00)
定休日:不定休
ワンポイント:玄関で靴を脱いで入店するスタイルなので、脱ぎ履きしやすい靴での来店がベター!
ライター:うぃーだ
旅と酒ともふもふ動物を愛するアラサー女子。
上場企業の広報部や地域情報誌の編集者を経て、「よしのーと」ライター兼吉野ビジターズビューロースタッフに。